かつら大手に決める



契約書に判を押すと、すぐにその場で頭の型をとった。

店員が直径30cmくらいの円盤をもってくる。
円の形をした枠の内側に柔らかい膜が張ってある。
これを頭に押し当てるのだ。
押し当てて10分ほどすると,膜が固まる。
膜には頭をつっこんでいるから,頭の形が膜に写し取られるわけだ。
これに境界,つまりどこからかつらにするか,という線を引いて型のできあがりである。ものの30分。

「2ヶ月で完成しますからね。」
あっという間に120万円の契約をとったからか、営業マンは笑顔で店を出る私を送り出してくれた。

ところがである。契約して数日経つと,だんだん不安になってきた。
かつらに120万円も払わないといけないのか。
120万円で手に入るのは、数ヶ月しか使わない移行用のかつらが3つ。ずっと使うカツラは1つだけ。
そんな死んだような金を払うのがいいんだろうか。
そもそも、120万円という金額は、本当に適正なんだろうか。

どんどん不安は広がっていく。
そこで、今更ながら、他の店の相場を探ることにした。
とは言っても、知っているカツラサロンはA社とB社だけ。
ということは、B社しかない。

B社に電話し、かつらへの移行を自然に行ういい方法がないかを聞いた。
すると,良いプランがあるから説明したいという。やっぱり,かつらサロンにとって定番の質問のようだ。
駅前にある,かつらサロンにさっそく出かけていった。
B社が提示したのは、かつらを装着する前に,増毛するプランである。 増毛とは,自毛に追加の髪を結びつける方法である。毎月、薄くなった部分に少しずつ髪を追加していくのだ。
これなら少しずつ増えるからバレないし、二度と使わない無駄なかつらを作らなくてすむ。
しまった。こちらの方がよかった。

とはいえ、後の祭りである。
既にA社とは契約してしまっているのだ。どうしよう。